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ストレスの理解と管理の仕方②
「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。 わたしは心優しく、へりくだっているから、あなたがたもわたしのくびきを負って、わたしから学びなさい。そうすればたましいに安らぎが来ます。 わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからです。」マタイ11章28節~30節
神の創造の傑作としての人間
古代イスラエルのダビデ王は、神の驚くべき御業について、詩篇の中でこのように美しく描写しました。
『あなたが私の内臓を造り、母の胎のうちで私を組み立てられたからです。私は感謝します。あなたは私に、奇しいことをなさって恐ろしいほどです。私のたましいは、それをよく知っています』(詩篇139篇13節~14節) 』
この詩篇が語っていることは、まずダビデ王自身が、自分の身体が神がお造りになった驚くべき創造の作品であると知っていたことでした。そして、更にその創造は他の被造物と違う、とてもユニークな存在であるということを理解していたということです。しかし、だからと言って、ダビデ王が生きていた時代(紀元前11世紀)では、人間の身体の複雑な構造や、生理的な事柄を、充分には理解できてはいなかったでしょう。
人間は自分が意識しなくても、理性的であろうと考えたたり、無意識のうちに言葉を発することが出来たり、又、ケガなどから自らを守る回復力(自然治癒力と呼ばれるもの)があったりと、人間本来に備わっている多くの能力があります。それはある目的をもって神によって組み込まれているものです。その意味で人体は驚くべき機械なのです。しかしそれは有機的な機械であり、生きている存在です。このようなことは未だに充分に人類が解明できない未知の分野です。そして、このことは「ストレス」とは何かについて考えることにも当てはめられます。
ストレスのメカニズム
ストレスについての研究の初期段階で、ハンス・セリエ博士(カナダ人の内分泌学者。博士はストレスという言葉を作った最初の研究者。)は、「病気の性質を知り、それを正しく理解することは医学上もっとも重要なことである。なぜならそれが、病に対抗する最も有効な手段となるからである。」と説明しています。したがって、病気を発症させる原因として、ストレスが人体にどのようにかかわっているのか、そのメカニズムを知ることはとても重要なことです。一つの例として、人体に起こる連鎖反応を見てみましょう。例えば、人がある種の苦痛(ストレス要因)を感じているとします。その場合、まずそのストレスは、最初に「大脳皮質」(脳の思考などの中枢)によって認識されます。そして、すぐにその信号が、脳の様々な異なる部分へと発信されていきます。
まず「海馬」と呼ばれる脳の記憶や学習機能に関わる器官で認知され、その結果、身体全体にストレスの警報を鳴らします。その警報を聞き、体は攻撃的になるか、又、逃避的な行動をとるかの次の行動への備えをします。そして信号は、「視床」と呼ばれる視覚や聴覚など感覚を感じる器官へと伝えられ、更に「視床下部」へと送られます。視床下部の働きは、自律神経や副腎皮質ホルモンの分泌などのバランスを整える器官です。そしてその信号の一部はもとの大脳皮質へと戻され、大部分は中枢神経系へとメッセージを伝えます。この時点で身体はいわば、完全な警戒態勢に入ります。 そして、身体の他の部分、心臓の血管や消化器官、及び、筋肉や皮膚(肌)などが活発に動きだします。これは突然のストレスの要因に対処する為の、人の自然な反応として神が造ったものであり、人体を調節するのを助ける役割をします。しかし、あまりにも大きなストレスが人にかかり、身体が対処出来なくなった場合、ストレスは免疫系を衰弱させる原因となります。
特に、白血球に影響がでてきます。通常、人はおよそ一兆個の白血球を持っています。この白血球は三つのカテゴリに分類され、それは、食細胞、T細胞、及び、B細胞です。この三つは共に調和して働きながら、外から侵入してくる細菌から体を守ります。そして、次に来る攻撃に対しても、その攻撃から身体を守る為の抗体を作りだします。しかしながら、もし大きなストレスが、それも継続的に身体に及ぶならば、人の身体は感染と戦うための免疫力や必要な細胞を減少させてしまいます。そしてその最終的な結果として、人の身体は様々な病気や疾病などに犯されやすくなり、健康を害する大きな要因を与えてしまいます。
聖霊の宮としての身体
<p>使徒パウロは、キリストにある信者の肉体は聖霊の宮であり、ゆえに主の宮を大切に世話することを委ねられていると記しました。 「あなたがたのからだは、あなたがたのうちに住まれる、神から受けた聖霊の宮であり、あなたがたは、もはや自分自身のものではないことを、知らないのですか。あなたがたは、代価を払って買い取られたのです。ですから自分のからだをもって、神の栄光を現わしなさい。」1コリント6章19節・20節
「主が胎を閉じておられた。」
<p>ハンナは自分自身を「心に悩みのある女」(1サムエル記1章15節)と呼んでいます。その悩みとは、自分が子を産めない不妊の女であるということでした。ハンナは夫エルカナとの子供を求めていました。この当時は一夫多妻で、同じ妻のペニンナには既に子供がありました。この時代、子を産めないという事は、自分の存在価値を失わせるようなことでした。夫は悩むハンナを気遣い「あなたにとって私は10人の息子以上の者ではないか。」(8節)と慰めます。しかしその言葉だけでは癒される事が出来ない程、ハンナの悩みは深刻でした。それは妻として、女性として、そして、一人の人間としての苦悩でした。その上、同じ妻のペニンナからの嫌がらせもあり、ハンナは精神的に追い詰められていきます。なぜ?このようなことが起こるのでしょうか。どうして?このような不運をハンナは背負わなければならなかったのでしょうか。その理由について聖書は驚くべき言葉を語ります。「主が胎を閉じておられた。」(5節)何と!この事を仕向けたのは神でした。神が原因でした!聖書を読むと、時折、「なぜ?どうして?」と思わせる箇所が出てきます。どうしてこんな言葉が聖書にあるのか?神が人を不幸に陥れるような事があるのだろうか?よく分かりません。しかし、聖書が敢えて記しているからには理由があるのです。計画があるのです。それは人の営みを超えて働く神の御心によることです。
この御言葉は、単に霊的な例えとしてのみ理解されるべきものではなく、個々の身体に対して、又、社会的な観点からも理解されるべきものです。つまり人は、健康を促進するための努力だけでなく、精神面で、過大なストレスが継続的に身体にかからない生活をすることを心掛けるべきです。その意味で、全てのリーダーは、リーダーの元で働く人々に対しての、健康面の促進やストレスを除去するための予防の責任を理解する必要があります。ストレスや生活習慣について完全にコントロールすることは難しいことですが、日々の生活の中でいくつかの事を守ることは大きな助けになります。具体的に言えば、清潔な水を欠かさないことや、食事に対する配慮。感染症に対する予防接種や日々のビタミン剤やサプリメントを飲むこと。そして週に3回~4回の適度な運動を推奨するといったプログラムです。
ここまでが、ストレスを理解し管理する方法を探る三回連載記事の第二回目です。最終回は「休息の重要性」を探ります。その時まで、この記事の著者は、旧約聖書からのこの御言葉を持って終わります。 「わが子よ。私のことばをよく聞け。私の言うことに耳を傾けよ。それをあなたの目から離さず、あなたの心のうちに保て。見いだす者には、それはいのちとなり、その全身を健やかにする。」箴言4章20節~22節
■ブルース・マクドナルド博士は、「リーダーシップ」、「マネージメント」、そして、「職業的ストレス認識と予防」の教育セミナーを提供する、リニューアル・コンサルタンティング社の経営責任者です。日本をこよなく愛し、毎年のようにCFNJ聖書学院に来て、講義をしてくださいます。夫人のマリリンさんと結婚33年、二人の息子さんと二人のお孫さんがおり、アメリカで最も古い町、バージニア州ウィリアムズバーグに在住しています。
■参考文献/アーント, ウィリアム & F. ウィルバー・ギングリッチ(1979)「新約聖書と初代クリスチャン文学のギリシャ語・英語語彙目録」第2版。シカゴ:シカゴ大学出版。グリーンバーグ, ジェラルド(2006) 「包括的ストレス管理」第9版 ニューヨーク:マグロウヒル出版社。ヘルリーゲル, ドン&ジョン・スローカム(2011) 「組織行動」第13版。メーソン:サウスウエスト・センゲージ・ラーニング株式会社。みことばは新欽定訳聖書を引用。(日本語は新改訳聖書より引用)。シーワード, ブライアン・ルーク(2004)「ストレスを管理する:健康と幸福のための原則と戦略」第4版。サドベリー:ジョーンズ&バートレット出版社。