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この記事は学院のアルプスコースで教えられた講義の要約です。今回を含めて合計3回のレポートで記載されます。最初の記事は、「人が緊張の様々なレベルをどのように認識するか。」を検証しながらストレスの意味を定義します。二回目の記事は、「人体への影響について」を考えます。最後の記事では、「リーダーが職場、奉仕、家庭あるいはそれらすべての複合環境において直面するストレスをどのように減少させるか。」について述べます。
「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。 わたしは心優しく、へりくだっているから、あなたがたもわたしのくびきを負って、わたしから学びなさい。そうすればたましいに安らぎが来ます。 わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからです。」マタイ11章28節~30節
ストレスの定義
人類の夜明け以来、人は多くの複雑な事態を生むような様々な要因からくるストレスの影響を経験してきました。それは人体に対してだけでなく、社会全体にも影響を及ぼしています。多くの場合、その影響は初期段階では気づかれません。しかし時間が経つにつれ、ストレスに抵抗することが難しくなり、体に負担がかかるようになります。しかし、ストレスという用語は医科学においてかなり新しいものです。
ストレス研究の最も初期の先駆者は、ハーバード・メディカルスクールの故ウォルター・キャノン博士(1871~1945)です。ストレス要因に対する人体反応についての初めての説明を彼の研究が提供しました。彼はこれを「攻撃・逃避反応」と呼びました。結果として、人はストレスを受けているとそれに抵抗するか、それともストレスから逃避するかのいずれかの反応を取ります。
最近になって、ストレスに対する第三の反応が観察されています。それは「フリーズ(固まる)」として認定されています。この場合、心はより控えめなアプローチをとります。たとえば、フクロネズミが驚くと死んだふりをするように、また、走行中の自動車のヘッドライトをじっと見つめて立ちすくんでしまう鹿のように。これは混乱状態として認識されうるものでもあります。何をすべきか分からない、あるいは、人が仕事に圧倒されてしまい、自分の心の殻の中に隠れてしまうというような状況に追い込まれてしまいます。
20世紀前半、故ハンス・セリエ博士(1907~1982)、内分泌学者(人体中のホルモン分泌の専門家)でしたが、医学と化学で博士号を取得し、ストレスという用語を初めて用いました。彼はストレス要因を「人体にかかるあらゆる要求に対する身体の非特異的反応」と定義しました。(ヘルリーゲル&スローカム 2011年)更に、彼は人体が不安にどのように反応するかという3段階を定義し、「汎(はん)適応症候群」と名付けました。(グリーンバーグ 2006年)それは以下の3段階です。
ストレスに対する身体の初期反応時の覚醒状態。
身体がストレスに適応し、高レベルの生理学的覚醒状態で抵抗し続ける。
ストレスが長期間継続すると、身体は慢性的に過度の活動状態にあり、抵抗が機能しなくなって、病気や死につながる極度の疲労状態に陥る。
それにもかかわらず、すべてのストレスが悪いものではありません。実際、ストレス研究には3つの領域があります。 最初のものは、「ユーストレス」と言われるものです。これは、ジェットコースターに乗った時のスリル感や二人の人が結婚するときのような、楽しくエキサイティングな出来事が起きたときのものです。二つ目は「ニューストレス」と呼ばれます。これは、その人個人の幸せな人生には重大な影響を及ぼさないような情報を受け取ったときなどにかかるストレスです。例えば何か不安になるようなニュース、世界の遠く離れた場所のある町が竜巻で破壊された等のニュースを聞いた時。このようなニュースは、その人が特に何らかの行動を起こす必要がないものです。最後の分類項目は「ディストレス」と名付けられています。これはネガティブ(否定的)なもので、更に2つに分類できます。一つ目は「急性ストレス」で、かなり激しいものですが、すみやかに解消されるものです。これをもっとよく理解するために、子どもが野球をしているのを想像してみましょう。12歳の少年は、いつかはメジャーリーグの投手になって最高のステージ、ワールドシリーズに出るのが夢なんだ、と言います。少年として、これは単なる空想にすぎません。しかし、その願いが実現して、その人が実際にメジャーリーガーとなり、チームがワールドシリーズに勝ち残り、その最後の試合で自分がそのマウンドに立っていることに気付いたとき、彼はある程度の急性ストレスをきっと感じるでしょう。二つ目は、激しく、長い期間つづくような「慢性ストレス」です。この慢性ストレスの例は、別名、「PTSD」として知られる「心的外傷後ストレス障害」に苦しむ、対外戦争に出兵した退役軍人に見られます。この障害の症状は何年も長引く可能性があり、家族などの近親者にも故意ではありませんが同じように負担をかけうるものです(シーワード 2004年)。
前述した内容に基づいて考えると、ビジネスにおいても、又、礼拝の場においても、リーダーは、自分または部下が仕事の負担が重すぎることや、人生に多くのプレッシャーがあって対処困難な時間を過ごしているとき、それを認識することが肝要です。イエス様は『すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。(マタイ11章28節)』と提案し、ストレスに対処する良い解毒剤を提供してくれています。
コイネーギリシャ語、別名ヘレニズムギリシャ語で、この節の 休ませて という語はアナパウソー(αναπαύσω)です。これは休息を取る理由として理解されるものですが、休息を与えること、つまり、リフレッシュや元気回復のための行為(アーント&ギングリッチ 1979年)を意味します。
結論として、リーダーは、人々が職場を楽しむことができる雰囲気を提供するように考慮すべきであり、又、休息やリラックスする時間をとるように励ますべきだ、ということです。これは健康的であるだけではなく、賢く理にかなった方策でもあるのです。(次号に続く)
■ブルース・マクドナルド博士は、「リーダーシップ」、「マネージメント」、そして、「職業的ストレス認識と予防」の教育セミナーを提供する、リニューアル・コンサルタンティング社の経営責任者です。日本をこよなく愛し、毎年のようにCFNJ聖書学院に来て、講義をしてくださいます。夫人のマリリンさんと結婚33年、二人の息子さんと二人のお孫さんがおり、アメリカで最も古い町、バージニア州ウィリアムズバーグに在住しています。
■参考文献/アーント, ウィリアム & F. ウィルバー・ギングリッチ(1979)「新約聖書と初代クリスチャン文学のギリシャ語・英語語彙目録」第2版。シカゴ:シカゴ大学出版。グリーンバーグ, ジェロルド(2006) 「包括的ストレス管理」第9版 ニューヨーク:マグロウヒル出版社。ヘルリーゲル, ドン&ジョン・スローカム(2011) 「組織行動」第13版。メーソン:サウスウエスト・センゲージ・ラーニング株式会社。みことばは新欽定訳聖書を引用。(日本語は新改訳聖書より引用)。シーワード, ブライアン・ルーク(2004)「ストレスを管理する:健康と幸福のための原則と戦略」第4版。サドベリー:ジョーンズ&バートレット出版社。